家族・親族・友人に、物や場所を貸す(借りる)方へ口約束の貸し借りを、
書面で残す
車、カメラや工具、実家の空き部屋、使っていない土地。身近な人に物や場所を貸す約束は、口約束で始まることが多く、期間も、費用の分担も、壊れたときの扱いも決めないまま、何年も過ぎてしまいます。タダで貸すのか、実費だけもらうのか、それとも家賃を取るのかで、民法の定める契約の型(使用貸借か賃貸借か)が分かれ、貸主から解約できる条件も、借主が亡くなったときの扱いも、貸した家や土地が売られたときの扱いも変わります。このガイドは、個人どうしの貸し借りに絞って、民法の条文と、道路運送法・自動車損害賠償保障法・農地法・借地借家法などの関連法令を一次確認し、物・車・部屋・土地のそれぞれで書面に残しておきたい項目を整理した解説です。お金の貸し借り、事業者によるレンタル、事業用の不動産の賃貸借は、別のガイドで扱います。
物を貸す・借りる方

無償か有償かで、契約の型が変わる
カメラ、工具、楽器、家電。物を貸す約束は、無償なら使用貸借、賃料を取れば賃貸借、保管を頼まれれば寄託と、型が分かれます。型によって、貸主から返してもらえる時期や、壊れたときの扱いが変わります。
家賃は取らず、実費だけを払ってもらうという形も多く見られます。名目の付け方によっては、無償と言えるのかが問題になります。
貸した物を壊された、約束の時期になっても返ってこない、といった場面での扱いも、契約の型によって変わります。貸す前に、物の状態、返してもらう時期、壊れたときの連絡の方法を、簡単な書面やメッセージに残しておくと、後から経緯を説明しやすくなります。あわせて、その物が誰の持ち物か、共有名義になっていないかも、最初に確かめておきたい点です。
友人・家族に車を貸す方

免許の確認、保険、事故、返却の状態
車を貸すときは、免許の確認、任意保険の運転者の範囲と年齢条件、事故や違反があったときの連絡と費用の扱いを決めておきます。ガソリン代などを受け取る場合の考え方も整理が必要です。
返却のときの燃料・清掃・傷の確認を、日付と写真で残しておく方法もあります。
貸す相手が運転免許を持っているか、免許の効力が停止されていないかは、貸す前に確かめます。免許のない人や酒気を帯びた人に車を提供する行為には、道路交通法に罰則の定めがあります。事故が起きたときに、誰の保険をどの順序で使い、足りない部分を誰が負担するのかも、貸す前に話し合って書面に残しておくと、当事者間の調整がしやすくなります。
部屋・実家・空き家を使わせる方

管理規約、光熱費、鍵、退去の求め方
子や親族に空き部屋を使わせるとき、光熱費や管理費の負担、鍵の管理、同居人や来客の扱い、出ていってほしいときの手順を決めておくと、後の食い違いを防げます。
マンションの場合は管理規約の確認も欠かせません。共有名義の建物を貸すときは、共有者の同意の取り方も整理しておきます。
無償で住まわせている場合でも、期間の定めや使用の目的がなければ、貸主はいつでも契約を解除できます。ただし、相手の生活の拠点になっている建物では、突然の退去の求めが新たな揉め事のもとになります。出ていってもらう場合の予告の時期や、荷物の引き取りの方法を、貸す段階で話し合っておくと、お互いに準備がしやすくなります。
土地を知人・親族に使わせる方

借地借家法の適用の有無と、農地の許可
家庭菜園、駐車スペース、置き場。建物を建てるための土地を貸すのか、そうでないのかで、借地借家法が適用されるかが分かれます。農地を貸す場合は、農業委員会の許可も関わります。
植えた物や置いた物の撤去、元の状態に戻す範囲も、先に決めておくと安心です。
土地は、物や車と違って、貸している間に所有者が変わる、境界や通行の問題が出る、貸している範囲があいまいになるといったことが起きやすい対象です。どこからどこまでを、何のために、いつまで使うのかを、図や写真を添えて書面に残しておくと、年月がたってからも内容を確認しやすくなります。畑や置き場として使わせる場合は、使い道を変えてよいか、転貸してよいか、撤去の費用を誰が持つかも、あわせて決めておく項目です。
壊された・返ってこない・費用で揉めた方

費用の分担、損害、返却の確認
借りた物を壊した、返ってきた物に傷がある、修理代は誰が払うのか。使用貸借では、通常の必要費は借主が負担し、貸主の請求には返還から1年という期限があります。
返却のときに確認書を交わす、催促のやり取りを記録に残すといった備えも、後の整理に役立ちます。
返してもらえないからといって、相手の家に入って持ち帰るなど、力ずくで取り戻すことは、別の問題を生むおそれがあります。まず、いつ、何を、どのような約束で貸したのかが分かる資料と、催促の経過を集めます。そのうえで、話し合いで解決するのか、裁判所の手続を考えるのかを検討する順序になります。
貸した物・家が売られる、亡くなるなどの場面

売却、相続、共有のときの取り決め
借主が貸した物を売ってしまった、貸している家を売りたい、借主や貸主が亡くなった。使用貸借には賃貸借のような第三者への対抗の定めがなく、借主が亡くなると契約は終わります。
売却や相続のときの扱いを先に書面に置いておくと、承継した人との食い違いを減らせます。
貸した物の持ち主が亡くなった場合は、貸主の地位を相続人が引き継ぎます。借りていた人の側に何かあったときに誰へ連絡し、預けている荷物をどう返すのかも、家族が事情を知らないまま手続に入らずに済むよう、あらかじめ書面に残しておく例があります。共有名義の物や建物の場合は、共有者のあいだの決め方も合わせて整理します。借主が貸した物を勝手に売ってしまった場合や、貸した家を貸主が手放す場合に、新しい持ち主へ何を主張できるのかも、貸し借りの型によって異なります。このガイドの各ページでは、こうした場面ごとに、民法などの条文に沿って、書面に入れておきたい項目を順に取り上げています。
このガイドの解説ページ
よくあるご質問
友人に物を貸すとき、口約束でも契約は成立しますか?
成立します。使用貸借は、貸す約束と無償で使って返す約束だけで成り立つ契約で、書面は必須ではありません。ただし、書面がないと、借主が物を受け取る前なら貸主から契約を解除できます(民法593条の2)。期間、費用、壊れたときの扱いは口約束だと食い違いやすいので、簡単でも書面かメッセージで残しておくことが多く行われています。
家賃は取らず、固定資産税やガソリン代だけ払ってもらう場合、無料と言えますか?
実費を払う形でも使用貸借として扱える場合がありますが、払うお金が使用の対価と評価されると、賃貸借(民法601条)と見られるおそれがあります。名目の付け方、金額、毎月払うのかどうかなど、実態で判断されます。契約書の題名だけで決まるものではないため、何の費用を、誰が、いつまで払うのかを書面に具体的に書いておきます。
期間を決めずに貸している物を返してほしいと言えますか?
期間も使う目的も決めていないときは、貸主はいつでも契約を解除できます(民法598条2項)。使う目的を決めている場合は、その目的に足りる期間が過ぎたとき、または目的を終えたときに返してもらえます。借主は、いつでも契約を解除して返すことができます(同条3項)。
借りていた人が亡くなったら、貸していた物や家はどうなりますか?
使用貸借は、借主が亡くなると終了します(民法597条3項)。賃貸借とは違い、借主の相続人が借主の地位を引き継ぐわけではありません。借りていた物を返してもらう手順や、中に残った荷物の扱いは、先に書面に決めておくと整理しやすくなります。
借りた物を壊した場合、貸主はいつまでに請求できますか?
借主が契約に違反して使ったことで生じた損害の賠償と、借主が出した費用の償還は、貸主が物の返還を受けた時から1年以内に請求する必要があります(民法600条)。返却のときに状態を確認して記録しておくと、あとで争いになりにくくなります。
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運営事務所・ご相談のご案内監修:アトラス行政書士法人(代表社員 荒木素子・特定行政書士) 最終確認日:2026年10月22日