このページの要点
- 使用貸借は借主の死亡によって終了する(民法597条3項)。貸主の死亡は終了事由として挙げられておらず、相続人が貸主の地位を引き継ぐ(同法896条、898条)。
- 賃貸借に準用されるのは597条1項のみで、借主の死亡による終了は準用されていない(民法622条)。
- 配偶者居住権・配偶者短期居住権は、被相続人の建物に居住していた配偶者の制度。被相続人が配偶者以外と共有していた建物では配偶者居住権は取得できない(民法1028条、1037条)。
- 共有物の管理は持分の価格の過半数、変更は全員の同意(民法251条・252条)。死亡時の窓口、鍵、荷物、共有者の同意を書面に置く。
結論:借主が亡くなると使用貸借は終わる。貸主が亡くなっても終わらず、相続人が貸主になる
身近な人への貸し借りは、長く続くことが多く、そのあいだに貸主か借主のどちらかが亡くなることは珍しくありません。物の貸し借りなら、遺品の整理の中で「これは借りていた物だった」と分かる。家や土地なら、住み続けている家族が出ていくのか、残るのかという問題になる。そこに、貸している物や家が複数の人の共有名義だったという事情が重なると、誰の同意で貸したのか、誰が返してもらう立場なのかが、一気に複雑になります。
このページは、貸主や借主が亡くなった場面と、共有の物や建物を貸す場面に絞り、民法の条文にもとづいて一般的に整理します。特定の家族や物への当てはめではなく、相続の手続そのもの(遺産の分け方、名義の変更の手続など)は扱いません。契約書の骨組みは使用貸借契約書の書き方、期間と終わり方の条文は貸す期間と「返して」のときで扱いますので、ここでは死亡と共有に固有の論点に絞ります。
結論を先に並べます。
- 使用貸借は、借主の死亡によって終了する(民法597条3項)。相続人が借主の地位を引き継いで使い続けられる、という定めではない。
- 貸主の死亡は、使用貸借の終了事由として民法597条に挙げられていない。貸主の相続人が、貸主の立場を引き継ぐ(民法896条)。相続人が複数なら、貸している物や建物は共有になる(同法898条)。
- 賃貸借は、借主が亡くなっても当然には終わらない。民法622条が賃貸借に準用するのは597条1項のみで、借主の死亡による終了を定める3項は準用されていない。無償か有償かで、借主の死亡の結果が逆になる。
- 被相続人の建物に無償で住んでいた配偶者には、配偶者短期居住権という一時的な居住の保護がある(民法1037条)。条文の入口だけを、このページで紹介する。
- 共有の物や建物を貸すときは、共有者の持分の価格に従い過半数で決める事項と、全員の同意が要る事項がある(民法251条・252条)。長期で貸し、貸主から解約できないとする書き方は、変更や管理の範囲との関係を確認する。
- 死亡時の連絡先、鍵、荷物、返す相手、共有者の同意の方法を、契約書に置いておくと、引き継ぐ人が動きやすい。
借主が亡くなったとき:使用貸借は終わり、返す手続が始まる
民法597条は、使用貸借の終わり方として、期間を定めたときはその期間の満了(1項)、期間を定めず使用及び収益の目的を定めたときは借主がその目的に従い使用及び収益を終えること(2項)を挙げ、そのうえで3項に「使用貸借は、借主の死亡によって終了する」と定めています。無償の貸し借りは、貸主と借主の個人的な信頼関係を土台にしているので、借主が亡くなったときに、貸主が望まなくても相続人が借主の立場を引き継ぐ、という形にはしていないのです。
借主が亡くなったとき:使用貸借と賃貸借の違い
| 使用貸借(無償) | 賃貸借(賃料あり) | |
|---|---|---|
| 契約の終了 | 借主の死亡によって終了する(民法597条3項) | 借主の死亡では当然には終了しない。民法622条が準用するのは597条1項のみ |
| 相続人の立場 | 借主の地位は引き継がない。相続人は、借用物を返還する義務などを負う立場になる | 借主の地位が相続の対象となるのが一般的な整理。相続人が使用を続けられる |
| 使い続けたい場合 | 新しい合意(新たな使用貸借や賃貸借)をする必要がある | 契約が続くので、賃料の支払いなど従来の条件が引き継がれる |
| 家族が同居していた場合 | 契約の終了後は、使用の根拠が問題になる。猶予や新たな合意を書面で決める | 賃貸借の継続の問題として、貸主との関係を確認する |
表は条文の整理です。建物の賃貸借は、さらに借地借家法の規定が関わります。
相続人が受け継ぐもの。使用貸借が終わるといっても、借主の死亡ですべてが消えるわけではありません。借りていた物を返す義務、借主が負っていた費用の精算や損害の賠償の問題は、借主の財産に関する権利義務として、相続人が引き継ぐのが原則です(民法896条)。したがって、貸主は、借主が亡くなったことを知った時点で、借用物の返還を相続人に求める立場になります。
1年の期限。借主が契約の本旨に反して使用したことによる損害の賠償と、借主が支出した費用の償還は、貸主が返還を受けた時から1年以内に請求しなければなりません(民法600条1項)。この1年は、借主の死亡後の相続人との間にも関わるため、返還を受けた日を記録しておくことが重要です。この期限の読み方は費用と、壊れた・汚れたときで整理しています。
同居していた家族の立場。家を貸していた場合に、借主が亡くなったあとも、同居していた家族がそのまま住み続けるのは、よくある光景です。しかし、民法597条3項により使用貸借が終了すると、家族が使い続ける根拠は、契約上は失われます。貸主が黙っているうちに、事実上使い続けられる状態が長引くと、貸主が「許していた」のか「放置していた」のかが曖昧になります。猶予を与えるなら、何か月までか、その間の費用は誰が払うか、退去の手順をどうするかを、書面に残します。使い続けてもらいたいなら、新しい合意を作り、使い続ける人の名前、期間、費用、終わり方を書きます。
書面があるとき・ないとき。書面があれば、借主の死亡時の扱いが書かれているかを確認します。書かれていなければ、条文のとおり終了します。書面がなければ、メッセージのやり取りや、貸した日の記録が、貸し借りの存在と内容を示す資料になります。相手が相続人の場合は、貸し借りを知らないことが多いため、資料を示して、冷静に事実を共有することが先です。
借主が亡くなったあとの、一般的な流れ
- 亡くなったことを知ったとき使用貸借が終了していることを確認する。貸している物の所在と状態を、相続人に確認する。
- 連絡の相手を決めるとき相続人が複数のときは、窓口になる人を決めてもらう。相続人が誰か分からないうちは、物を勝手に持ち出さない。
- 返してもらうとき返還の日時、場所、状態、付属品、鍵を相続人と確認する。返却確認書や目録で記録する(返却の確認と、返してくれないとき)。
- 精算するとき借主が出した費用、壊れた部分、光熱費などの未払いを整理し、1年の期限(民法600条)に注意して書面にする。
- 住んでいた家なら荷物の撤去、鍵の返却、退去の日を決める。使い続けたいときは、新しい貸し借りの合意を書面にする。
貸主が亡くなったとき:使用貸借は続き、相続人が貸主になる
貸主の死亡は、借主の死亡と扱いが違います。民法597条は、貸主の死亡を使用貸借の終了事由として挙げていません。相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します(民法896条)。したがって、貸していた物や家の所有権とともに、使用貸借の貸主としての立場も、相続人が引き継ぐのが原則です。
相続人が複数いるときは、相続財産は共有になり(民法898条1項)、各共同相続人は相続分に応じて権利義務を承継します(同法899条)。つまり、貸していた物や建物は、複数の相続人の共有物になります。ここから、次のような問題が出てきます。
- 誰が貸主か。遺産の分け方がまだ決まっていない間は、相続人全員が共有者として貸主の立場にいる。
- 返してもらうか、続けて貸すか。相続人の間で意見が分かれると、借主は誰の指示に従えばよいのか分からなくなる。
- 契約の存在が相続人に伝わっているか。書面がなく、借主の口頭の説明しか証拠がないと、相続人が「そんな約束は聞いていない」と受け取ることがある。
- 貸主が複数になった後の解除の方法。契約の当事者の一方が数人ある場合の解除の方法は、民法544条1項の定めとあわせて確認する。
借主から見ても、貸主が亡くなったあとは、書面とメッセージの記録が頼りになります。「いつまで貸す」と約束していたこと、費用をどうしていたかを、相続人に伝えられる形で残しておくことが、続けて使えるかどうかを左右します。
契約が続くとき、続けるかどうか。貸主が亡くなっても契約は終了しませんが、相続人が貸し続けたいとは限りません。期間や目的を定めているなら、その定めに従って終了します(民法597条1項・2項)。期間も目的も定めていなければ、貸主の地位を引き継いだ相続人は、いつでも契約を解除できます(民法598条2項)。つまり、書面に期間や目的が書かれているかどうかが、相続人が返還を求められる時期を左右します。借主の側は、長く使いたいなら、相続を見据えて、期間や目的を定めた書面を作っておくことで、立場が安定します。
相続人が貸し借りを知らないとき。貸主が生前に口頭で貸していた場合、相続人には貸し借りが伝わっていないことがあります。借主が資料を示さなければ、相続人は物や家を自分の財産として扱い、借主に退去や返還を求めることがあります。貸主が生きているうちに、簡単な書面を作り、相続人になる人にも貸し借りの存在を伝えておくことが、後の食い違いを減らします。
確認の問いと理由貸主が亡くなったとき、借主・相続人が確認すること
貸し借りの書面またはメッセージが残っているか。
期間、目的、費用、終わり方が分かる資料がないと、相続人は契約の内容を知ることができない。
相続人は誰で、窓口は誰か。
相続人が複数の場合、返還や継続の判断は共有者としての意思決定になる。窓口が決まっていないと、返した相手が後から問題になる。
遺産の分け方は決まっているか。
貸している物や家を誰が取得するかによって、続けて貸すか、返してもらうかの判断者が決まる。
借主は、使い続けたいのか、返したいのか。
続けたいなら、新しい所有者となる人との間で書面を作る。
費用や預かった物の精算は済んでいるか。
貸主の死亡で、請求先が相続人に変わる。精算を後回しにすると、1年の期限に影響する場合がある(民法600条)。
配偶者の居住を守る制度:配偶者居住権と配偶者短期居住権
無償で住んでいた家で所有者が亡くなると、残された配偶者は、住む場所を失うおそれがあります。民法は、これに備えて二つの制度を置いています。ここでは、条文の入口だけを紹介します。いずれも、「被相続人の財産に属した建物」に配偶者が住んでいた場合の制度で、親族に無償で貸している家の借主が、直接これらを主張できるという話ではありません。
条文民法
- 1028条1項被相続人の配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合で、遺産の分割や遺贈によって配偶者居住権を取得するものとされたとき、その建物の全部について無償で使用及び収益をする権利を取得する。ただし、被相続人が配偶者以外の者と建物を共有していた場合は、この限りでない
- 1037条1項配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していた場合に、一定の日までの間、その建物を無償で使用する権利(配偶者短期居住権)を有する。遺産の分割をすべき場合は、分割で帰属が確定した日または相続開始から6か月を経過する日のいずれか遅い日まで
- 1037条2項居住建物取得者は、第三者に対する譲渡その他の方法により、配偶者の居住建物の使用を妨げてはならない
- 1041条配偶者短期居住権には、使用貸借の民法597条3項(借主の死亡による終了)や600条(損害賠償・費用償還の1年の期間制限)などが準用される
条文は要約です。取得できるかどうかは、相続の事情によって個別に判断されます。遺産の分け方や登記の手続は、このガイドでは扱いません。
共有名義の建物では、1028条1項のただし書にあるとおり、被相続人が配偶者以外の者と建物を共有していた場合は、配偶者居住権が取得できない定めになっています。共有名義の家に家族を住まわせている場合は、相続のときに居住権の制度が使えるとは限らない点を押さえておく必要があります。貸主・借主の死亡に備える意味でも、契約書に死亡時の扱いを書いておくことの重要性が出てきます。
無償で貸している建物の一般的な取り決め(管理規約、光熱費、鍵、退去)は、部屋・実家・空き家を無償で貸すで整理しています。
共有の物や建物を貸すとき:誰の同意で貸したのか
貸す物や建物が複数の人の共有名義のとき、共有者の一人が、他の共有者に断りなく親族や友人に貸すと、あとで共有者の間で食い違いが生じます。民法は、各共有者は共有物の全部について持分に応じた使用をすることができると定め(249条1項)、共有物の管理に関する事項は各共有者の持分の価格に従ってその過半数で決めると定めています(252条1項)。共有物を使用する共有者があるときも同様です。
条文民法
- 249条1項各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる
- 249条2項共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う
- 251条1項各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く)を加えることができない
- 252条1項共有物の管理に関する事項は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する
- 252条4項共有者は、賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利で、山林は10年、土地は5年、建物は3年、動産は6か月を超えないものを設定できる(管理の範囲)
- 264条数人で所有権以外の財産権を有する場合(準共有)にも、共有の規定が準用される
条文は要約です。使用貸借による権利が252条4項の対象に含まれるかなど、当てはめは個別に確認する事項です。
共有の物・建物を貸すときの、決め方の整理
| 場面 | 条文から読めること | 書面で整えておくこと |
|---|---|---|
| 短期間、普通に貸す | 管理に関する事項として、持分の価格の過半数で決められる場合がある(252条1項) | 貸すことに同意した共有者を、貸主として契約書に並べる |
| 252条4項の期間を超えて貸す | 管理の範囲を超えると考えられ、共有者全員の同意が必要になる場合がある | 期間が長いときは、共有者全員の署名または同意書を取る |
| 建物の形状を変える工事を許す | 共有物の変更に当たると、全員の同意が要る(251条1項) | 工事を許すときは、共有者全員が承諾したことを書面に残す |
| 共有者の一人が自分だけ使う | 自己の持分を超える使用の対価を他の共有者に償還する義務がある(249条2項)。別段の合意があれば別 | 使う人と、使わせる人の間での費用の取り決めを書く |
| 共有者の一人が亡くなった | 相続人が持分を承継し、共有者が増える(896条、898条) | 貸主が増える場合の窓口と、同意の取り方を決める |
貸主の側が複数のとき、契約書に貸主を一人だけ書いて他の共有者を入れないと、他の共有者は契約の当事者ではなく、同意の有無が争われることがあります。貸主は共有者全員にする、または貸主を代表者一人にして他の共有者が書面で同意する、といった形が考えられます。当事者の書き方の基本は使用貸借契約書の書き方で整理しています。
また、共有の物や建物を売るときの扱いは、売却と所有権で整理しています。共有者の一人が持分を売った場合や、共有物全体を売る場合は、借主の使用がどうなるかを事前に決めておくと、借主の不安が少なくなります。
死亡・共有に備えて、書面に置いておく条項
死亡と共有は、貸し借りを始めるときには想像しにくく、書面から抜けがちです。しかし、実際に起きたとき、書面に何も書いていなければ、引き継ぐ人は条文だけを頼りに判断することになります。次の例は、一般的な書き方の例です。
書き方の例(一般的な例) 死亡・共有に備えた書き方
借主の死亡
理由民法597条3項に、返還の期限と同居者の扱いを足す。猶予を設ける場合は、期間を具体的に決める
貸主の死亡
理由貸主の死亡が終了事由でないことを確認する。窓口が分からないと、借主が混乱する
連絡先
理由死亡時に、誰に連絡すべきかが分かる。連絡先の取り扱いは、本人の同意の範囲で行う
鍵・荷物
理由借主の遺品と貸主の物の線引きが曖昧になりやすい
共有者の同意
理由共有者の同意の有無が後から争いになることを防ぐ(民法252条の考え方)
死亡・共有に備えた項目のチェック
- 借主の死亡時:契約の終了、返還の期限、同居者の退去、荷物と鍵の扱い
- 貸主の死亡時:契約の継続、相続人の窓口、通知の方法
- 共有の物・建物:貸主の記載、共有者全員の同意の取り方、長期で貸す場合の扱い
- 緊急時の連絡先と、変更の通知
- 売却や持分の譲渡があったときの借主への通知(売却と所有権)
起きがちなこと:亡くなってから契約の内容を探す、共有者の同意が後から問題になる
場面ごとに起きがちなこと
起きがちなこと遺品の中から借りた物が見つかる。相続人は借りていたことを知らず、貸主の主張と食い違う。
書面に残す項目貸出目録、借りた日の記録、貸主の所有を示す資料、返却確認の記録
起きがちなこと同居していた家族が、そのまま住み続けられると思っている。貸主は終了したと考える。
書面に残す項目契約の終了後の猶予、退去の期限、新たな合意の有無、鍵の返却
起きがちなこと相続人が複数で、返してもらう派と続けて貸す派に分かれる。借主は誰の言うことを聞くのか分からない。
書面に残す項目相続人の窓口、貸主の地位の承継の通知、継続するかの合意書面
起きがちなこと共有者の一人が他の共有者に断りなく貸した。他の共有者が後から異議を述べる。
書面に残す項目共有者全員の同意、貸主の記載、期間と管理の範囲、費用の取り決め
起きがちなこと亡くなった共有者の相続人が加わり、共有者が増えたため、同意を集めるのが難しい。
書面に残す項目共有者の窓口、同意の取り方、貸主側の意思決定の方法
表は一般的な例です。個別の事情によって、確認する資料が変わります。
死亡と共有の問題は、起きてから対処すると関係者が増えて難しくなります。貸し借りの全体の地図は個人間の貸し借りの契約書の全体像にまとめています。土地の貸し借りに固有の論点は土地を個人に貸す・借りるで、返してもらうときの確認は返却の確認と、返してくれないときで整理しています。
よくあるご質問
借りていた人が亡くなりました。その家族が借りていた物や家を使い続けることはできますか。
使用貸借は、借主の死亡によって終了します(民法597条3項)。借主の相続人が借主の地位をそのまま引き継ぐ定めではありません。使い続けたい場合は、貸主と新たに合意して、書面にしておく必要があります。貸主の側では、返還の期限と、荷物・鍵の扱いを決めて、相続人に伝えます。
貸している人が亡くなった場合、貸し借りの契約はどうなりますか。
民法597条は、貸主の死亡を使用貸借の終了事由として挙げていません。貸主の相続人が、相続開始の時から被相続人の権利義務を承継するため(民法896条)、貸主としての立場も相続人が引き継ぐのが原則です。相続人が複数いれば共有になります(同法898条)。契約書に貸主の死亡時の窓口を書いておくと、借主が戸惑いません。
共有名義の家を、共有者の一人だけで親族に貸すことはできますか。
共有物の管理に関する事項は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決めます(民法252条1項)。ただし、賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利を設定できる期間には上限が定められ(同条4項)、共有物の変更には全員の同意が要ります(民法251条1項)。他の共有者の同意の有無や、貸す期間によって結論が変わるため、貸主を共有者全員にするか、全員の同意書を取ることが多く見られます。
配偶者居住権があれば、無償で住んでいた家に住み続けられますか。
配偶者居住権は、被相続人の財産に属した建物に居住していた配偶者が、遺産の分割や遺贈によって取得するものとされたときに、その建物を無償で使用する権利です。被相続人が配偶者以外の者と建物を共有していた場合は取得できません(民法1028条1項ただし書)。別に、配偶者短期居住権があり、相続開始時に無償で居住していた場合に、一定の日までの居住を保護します(民法1037条)。いずれも、相続の事情で結論が変わる制度です。
契約書がない場合、亡くなった人との貸し借りをどう証明すればよいですか。
書面がなくても、メッセージのやり取り、貸した日の写真、受け取りの記録、費用の支払いの記録などが手がかりになります。貸した物の購入時の領収書や型番も、貸主が所有者であることを示す資料になります。亡くなる前に、簡単な覚書を取り交わしておくと、相続人への説明が容易になります。
あわせて読みたいページ
本ページは一般的な情報提供です。個別の貸し借りへの当てはめは、貸す物や場所、当事者の関係、合意の内容によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の当事者や取引を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 法務省 / 国土交通省 / 裁判所