個人間の貸し借りの契約書:使用貸借・賃貸借・預かりの違いと、書面の全体像

無償で貸すのか、お金を取るのか、保管を頼まれたのか。型の見分け方から、物・車・部屋・土地で変わる書面の項目までを整理します。

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結論:個人間の貸し借りは、賃料の有無と、使うのか保管なのかで型が決まります。型が違えば、返してもらえる時期、亡くなったときの扱い、壊れたときの責任が変わります。口約束でも成立しますが、書面にすると約束の拘束力と、後の確認のしやすさが変わります。

このページの要点

  • 無償で使わせるのが使用貸借(593条)、賃料を取るのが賃貸借(601条)、保管を頼むのが寄託(657条)。
  • 使用貸借は合意で成立し、物を渡す前なら貸主は解除できる。書面による場合は解除できない(593条の2)。
  • 借主の死亡で終わるのは使用貸借(597条3項)。期間の定めがない場合の終わり方も、型で違う。
  • 物・車・部屋・土地では、書面に追加する項目が変わる。貸す前と返すときの状態を比べられるようにしておく。

結論:貸し借りの型は「お金をもらうか」「預かるのか使うのか」の二つの問いで決まる

友人にカメラを貸す、親戚に車を貸す、子どもに空いている部屋を使わせる、知り合いに畑の一角を使ってもらう。身近な人どうしの貸し借りは、「いいよ、使って」の一言で始まり、書面のないまま何年も続くことが珍しくありません。ところが、貸し借りを巡る約束は、民法の上ではいくつかの「型」に分かれていて、型によって、貸した側がいつ返してもらえるか、借りた側が亡くなったらどうなるか、物が壊れたら誰がどこまで責任を負うか、という中身が大きく変わります。

型を分ける問いは、実質的に二つです。一つ目は、「使う側が、使うことの代わりにお金(賃料)を払うのか」。払わなければ使用貸借、払えば賃貸借です。二つ目は、「相手の物を使うのか、それとも相手の物を保管するのか」。使うのではなく保管を頼まれているのなら、寄託(預かり)です。この二つの問いに答えられれば、多くの個人間の貸し借りは、三つの型のどれかに収まります。

このページでは、全体の地図として次の点を順に説明します。

  1. 使用貸借・賃貸借・寄託の三つの型が、民法でどう定義されているか。
  2. 型を見分けるときの分かれ道と、「実費だけもらう」といった中間的な形の扱い。
  3. 約束が成立する時点と、書面にすることの意味(貸主が途中で取りやめられるかどうか)。
  4. 貸す物が、物・車・部屋・土地のどれかで、書面に追加したい項目がどう変わるか。
  5. メッセージのやり取りや覚書を、どう書面として位置づけるか。

各論は、境目の見極めを「無料で貸す」の境目、預かりとの違いを預かる・借りる・貸すの違い、車を貸す場合を友人・家族に車を貸す・借りるのページで扱います。なお、お金の貸し借り(金銭消費貸借)と、事業者が個人に貸すレンタルは、このガイドの対象外です。

三つの型は、民法の条文でこう定義されている

まず、条文の言葉を確認しておきます。型の違いは、曖昧な感覚の違いではなく、民法が契約の成立のしかたまで書き分けている違いです。

条文民法

  • 593条使用貸借:ある物を引き渡すことを約し、相手方が受け取った物を無償で使用・収益して、契約が終了したときに返すことを約することで効力を生ずる。
  • 601条賃貸借:ある物の使用・収益をさせることを約し、相手方がその賃料を支払うことと、引渡しを受けた物を契約終了時に返すことを約することで効力を生ずる。
  • 657条寄託:ある物を保管することを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することで効力を生ずる。

使用貸借の「使用及び収益」とは、物を使うことと、そこから生じる利益(果実)を取ることです。畑を借りて作物を収穫する、といった場面が典型です。条文は要旨で記載しています。

三つを並べると、違いは「対価」「目的」「返還」の三点に集約されます。使用貸借と賃貸借は、どちらも相手の物を使わせる契約ですが、対価の有無で分かれます。寄託は、相手の物を使うのではなく保管することが目的で、使うには寄託者(預けた人)の承諾が必要です(民法658条1項)。

使用貸借・賃貸借・寄託の比較(個人間の貸し借りで問題になりやすい点)

使用貸借賃貸借寄託(預かり)
何をする契約か無償で物を使わせる賃料を取って物を使わせる物を保管してもらう
相手方の対価なし(無償)賃料の支払い原則なし(報酬の特約があれば有償)
成立のしかた約束の合意で成立(受取り前は貸主から解除できる。書面なら不可)合意で成立合意で成立(無報酬の受寄者は受取り前なら解除できる。書面なら不可)
借りた人(預かった人)の注意返すまで、社会通念に照らした善良な管理者の注意で保存(400条)同左(返還までの保存義務)無報酬なら自己の財産に対するのと同一の注意(659条)
貸した側の修繕特に定めがない(引き渡す約束をした状態で足りると推定)使用に必要な修繕の義務がある(606条)修繕の定めはない。保管に必要な費用は、預かった側が預けた側に償還を求められる(665条・650条1項)
期間の定めがないとき貸主はいつでも解除できる(598条2項)各当事者がいつでも解約の申入れができる(617条)受寄者はいつでも返還できる(663条1項)
借りた人(預かった人)が亡くなったとき使用貸借は終了する(597条3項)使用貸借のような「死亡で終了」の定めは条文にない使用貸借のような「死亡で終了」の定めは条文にない

物が壊れたとき、期間、費用の分担などの詳細は、それぞれ別のページで扱います。表の「善良な管理者の注意」とは、その人の個人的な注意力ではなく、社会通念上求められる注意のことです。

賃貸借の「解約の申入れ」の期間は、土地の賃貸借で1年、建物の賃貸借で3か月、動産(車やカメラなど)の賃貸借で1日とされています(民法617条1項)。この差が、同じ「貸す」でも、物の種類によって返してもらうまでの時間が違う背景です。

型の分かれ道:賃料の有無と、使うのか保管なのか

実際の場面では、「家賃は取らないけれど、光熱費は払ってもらう」「ガソリン代を折半する」「お礼に食事をごちそうになる」といった、中間的な形が多く見られます。どこまでが「無償」と言えるかは、契約の全体から判断されることで、一律の線引きはありません。判断の入口として、次の分かれ道を使うことができます。

貸し借りの型の見分け方

相手の物を、誰が、何のために手元に置いているのか。

  • 相手方に使わせている。お金のやり取りはない(実費の精算のみ)
    使用貸借と整理できる場合が多い実費の範囲を超えて「使うことの対価」と見えるお金を受け取っていないかを確認します。実費の名目と書き方は、無償の境目のページで詳しく扱います。
  • 相手方に使わせている。使うことの対価として定期的にお金を受け取る
    賃貸借賃料の額が低くても、使用の対価であれば賃貸借の性質を持ちます。修繕や解約など、賃貸借のルールが働きます。
  • 物を保管してもらっている。使わせてはいない
    寄託使うには預けた側の承諾が必要です。預かった側の注意義務は、無報酬か有償かで変わります。
  • 保管を頼まれたが、同時に自由に使ってよいと言われている
    使用貸借または寄託の複合どちらが主たる目的か、書面で整理しておく必要があります。

型の判断は、契約書の題名ではなく、実際の合意の内容と運用で見ます。題名が「使用貸借契約書」でも、定期的に賃料にあたるお金を受け取っていれば、賃貸借として扱われる可能性があります。

型を決めずに貸し借りを始めると、後から「あれは貸したのか、預けたのか」「お礼は賃料だったのか」といった食い違いが生まれます。とりわけ、親族間では「そんなことで揉めるはずがない」という前提が置かれがちで、書面に残す習慣がありません。トラブルになるのは、貸している間に事情が変わったとき(相手の生活の変化、貸主の相続、物の売却、貸主の経済状況の変化)です。そのとき頼りになるのが、貸す前に書面に残した取り決めです。

貸し借りと混同されやすいのが、贈与です。贈与は、ある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾することで成立する契約です(民法549条)。使用貸借は「返す」ことを前提に使わせる契約、贈与は「返さなくてよい」ことを前提に与える契約で、この返還の有無が決定的な違いです。「あげたつもり」「借りただけのつもり」という食い違いは、貸した物を返してほしいと言い出したときに初めて表面化します。口約束だけで済ませていると、どちらの合意だったのかを後から裏づけにくくなります。

ちなみに、書面によらない贈与は、履行の終わった部分を除いて、各当事者が解除できます(民法550条)。使用貸借で書面がある場合の貸主の解除の制限(593条の2)とは、書面の有無で効果が変わるという構造が似ていますが、対象が異なる別の規定です。贈与なのか貸し借りなのかをはっきりさせておくことが、どちらの規定が問題になるかを分ける前提になります。

もう一つ、型を決める際に見落とされやすいのが、「誰の物か」という点です。貸す人は、その物の所有者であるとは限りません。共有名義の物や、他人から借りている物を、さらに貸すことがあります。他人から借りた物を貸主の承諾なく貸すと、借主が貸主の承諾なく第三者に使わせたことになり、貸主から契約を解除される原因になります(民法594条2項・3項)。貸す物が自分の単独所有かどうか、共有者や元の所有者の了解を得ているかは、書面を作る前の確認項目になります。共有の場合の決め方は、死亡・共有のページで扱います。

約束はいつ成立するか:口約束でも成立し、書面なら途中で取りやめにくくなる

使用貸借は、かつては借主が物を受け取ったときに成立する契約(要物契約)とされていました。現在の民法593条は、貸す約束と借りる約束の合意だけで成立する契約(諾成契約)として整理しています。つまり、「来週からこの機材を貸すよ」「使わせてもらうね」というやり取りだけで、契約は成立します。

ただし、まだ物を渡す前の段階では、貸主は契約を解除できます(593条の2本文)。気が変わった、自分で使う予定が入った、といった事情で貸すのをやめられる、という意味です。一方、書面による使用貸借は、借主が物を受け取る前でも貸主から解除できません(同条ただし書)。書面があるかどうかで、約束の拘束力が変わるのです。

条文民法

  • 593条の2貸主は、借主が借用物を受け取るまで、契約を解除できる。ただし、書面による使用貸借はこの限りでない。
  • 596条使用貸借には、贈与者の引渡義務に関する551条が準用される(貸主は、貸すと決めた時の状態で引き渡すことを約したと推定される)。
  • 597条期間が満了したとき、目的に従い使用を終えたとき、または借主が死亡したときに終了する。

書面の「書面」にあたるかどうかは、紙の契約書だけでなく、内容が合意として読み取れる文書かどうかの問題です。メッセージやメールの扱いは、書面の形式に関するページで整理します。

貸主の側は、貸す物を「貸すと決めた時の状態」で引き渡せば足りると推定されます(596条・551条1項)。たとえば、中古のカメラを貸すとき、貸主は、新品同様の状態を保証する義務を原則として負いません。借主の側は、受け取った状態を写真や目録で記録しておくことが、返却時の「傷は貸す前からあったか」という争いを避ける近道になります。

物・車・部屋・土地で、書面に追加したい項目が変わる

三つの型の考え方は共通でも、貸す物によって、起きがちな問題と、書面に入れるべき項目は違います。次の表は、四つの対象について、起きがちなことと、書面に残したい項目を並べたものです。

対象別:起きがちなことと、書面に残す項目

物(機材・工具・楽器・家電)

起きがちなこと返却の時期が曖昧なまま何か月も借りっぱなしになる。壊れた、傷がついた、という連絡が遅れて、いつの傷か分からなくなる。借主が別の人に又貸しする。

書面に残す項目物の特定(型番・シリアル番号・付属品の目録)、貸す前の状態の写真、返却の期限、壊れたときの連絡と費用の分担、又貸しの可否。

車・バイク

起きがちなこと運転する人が変わる。事故や違反があったときの責任の分担が決まっていない。保険の運転者の範囲に当たらない人が運転する。燃料や洗車の取り決めがない。

書面に残す項目運転できる人の範囲、免許の確認、保険の確認、事故・違反時の連絡と費用の負担、返却時の燃料・清掃・傷の確認。

部屋・実家・空き家

起きがちなこと貸主が亡くなった後の扱いが決まっていない。光熱費や修繕費を誰が払うかが曖昧。同居人や来客、ペットの扱いが決まっていない。

書面に残す項目使う目的、同居人・来客の範囲、費用の分担、鍵の管理、退去を求めるときの手順と期間、管理規約の遵守。

土地(畑・置き場・駐車スペース)

起きがちなこと建物を建てる目的が含まれていて、土地の貸し借りのルールが変わる。農地の場合に許可が必要になる。植えた物や置いた物の撤去が決まっていない。

書面に残す項目使う目的(建物を建てるかどうか)、設置・撤去する物の範囲、農地かどうかの確認、事故が起きたときの責任、終了時の原状回復。

対象別の詳細は、車は友人・家族に車を貸すページ、部屋・空き家は部屋・実家・空き家を無償で貸すページ、土地は土地を個人に貸すページで扱います。

四つの対象に共通する点は、「貸す前の状態」と「返すときの状態」を比べられるようにしておくことです。後で争いになる貸し借りの多くは、「もともとこうだった」「いや、貸したときはこうだった」という、状態の食い違いに行き着きます。

契約書・覚書・メッセージは、書面としてどう位置づけられるか

個人間の貸し借りで、正式な契約書を作る人はまだ少数です。多くは、メッセージ(LINEなど)で「貸してね」「いいよ」とやり取りしただけで済ませています。法律上、使用貸借や賃貸借の成立に特定の書式は要りません。ですから、メッセージのやり取りも、合意の証拠として意味を持ちます。

ただし、メッセージだけでは、次のような問題が残ります。

  • 貸す物の範囲(付属品・鍵・取扱説明書など)が特定されない。
  • 期間・返却の時期が「しばらく」「また今度」のように曖昧になる。
  • 費用の分担、壊れたときの扱い、又貸しの可否などの条件が、やり取りの途中でばらばらに出てきて、全体像がつかめない。
  • スマートフォンの買い替えや、アプリの設定の違いで、やり取りの記録そのものが残らなくなることがある。

契約書にまとめる意義は、これらの条件を一枚にまとめて、当事者が読み返せる形にすることです。契約書というと大げさに聞こえるなら、「貸出メモ」「覚書」という名前でも構いません。大切なのは、題名ではなく、次の項目が書かれているかどうかです。

貸し借りの書面に入れたい基本項目(共通)

  • 貸主・借主の氏名(住所または連絡先)と、貸す日。
  • 貸す物の特定(名称、型番や番号、付属品、貸す時の状態)。
  • 無償か、有償か。有償なら何を、いつ、いくら払うか。実費の精算があるなら、その範囲と精算の方法。
  • 期間(返却の期限)または使う目的。期限を決めない場合の、返してほしいときの伝え方。
  • 費用の分担(維持費、修理、消耗品)と、壊れた・汚れたときの連絡と扱い。
  • 第三者に使わせてよいか(又貸し、同居人、運転する人の範囲)。
  • 貸主・借主が亡くなったときの扱い。
  • 返却のしかたと、返却時の確認(日時、場所、状態の確認方法)。

書き方の例(一般的な例) 貸出の約束の書き方

期間

よくある書き方「しばらく貸します」
整えた書き方「令和○年○月○日まで貸します。延長するときは、期限の前に連絡して決めます」

理由期限が決まっていれば期間の満了で終了します。決めないと、貸主が返してほしいと思っても、いつ解除できるのかが不明確になります。

費用

よくある書き方「かかった分は払ってね」
整えた書き方「ガソリン代・駐車料金は借りた人が負担。車検・税金・定期点検の費用は貸した人が負担」

理由「かかった分」では、どの費用が含まれるのかで認識がずれます。費用ごとに負担者を決めておくと揉めにくくなります。

壊れたとき

よくある書き方「壊したら弁償ね」
整えた書き方「通常の使い方で生じた傷や劣化は弁償不要。通常の使い方を超える破損は、修理代を負担する。連絡は気づいた日のうちに」

理由「弁償」の範囲が曖昧だと、新品への買い替えを求めるか、修理で足りるかで食い違います。

貸す前・貸している間・返すときの流れ

書面を作るタイミングは、貸す前が理想です。ただし、すでに貸し借りが始まっている場合でも、現状を書面にまとめることはできます。時系列で見ると、確認する内容は次のように整理できます。

貸し借りの流れと確認すること

  1. 貸す前貸す物を特定し、状態を写真に撮る。無償か有償か、期間、費用の分担を決める。書面にする。
  2. 貸す日物(と付属品・鍵)を渡す。受け取った状態を借主が確認し、書面か目録にサインする。
  3. 貸している間借主は用法に従って使う。壊れた、困ったことがあれば、早めに連絡する。条件を変えるときは、メッセージでも内容を残す。
  4. 期限が近づいたとき延長するのか、返却するのかを、期限の前に確認する。延長するときは、新しい期限を残す。
  5. 返すとき状態を二人で確認し、付属品を確認し、未精算の費用を整理する。返却を確認したことを書面かメッセージで残す。

返却時の確認の書き方は返却の確認と、返してくれないときのページで、期間と終わり方は貸す期間と「返して」のときのページで扱います。

起きがちなことと、このガイドの読み進め方

起きがちなこと

  • 「貸した」つもりが、相手には「もらった」と受け取られていた。贈与と貸し借りの食い違いが、物の返却を求めたときに表面化する。
  • 期間を決めずに貸し、貸主が使いたくなったときに、返してほしいと言い出しにくくなる。
  • 貸主が亡くなった後、相続人が貸していた事実を知らず、物や家の扱いが問題になる。
  • 借主が貸された物を別の人に貸したり、売ったりしてしまう。
  • 貸した物が壊れて返ってきたが、いつ、誰が壊したのか分からない。

これらの場面は、別のページで詳しく扱います。借りた物が売られた場合は売却と所有権のページ、貸主や借主が亡くなった場合は死亡・共有のページ、書面の骨組みは契約書の書き方のページが入口です。すでに揉めている場合は、トラブルになったとき・よくある質問のページから確認するのが近道です。

よくある疑問と回答貸し借りでよくある思い込みと、条文から見た答え

  1. 無料で貸したのだから、壊されても文句は言えない。

    無償で貸していても、借主は用法に従って使い、返すまで善良な管理者の注意で保存する義務を負います(民法594条1項・400条)。契約の本旨に反する使用で生じた損害の賠償は、返還を受けた時から1年以内に請求します(600条1項)。

  2. 貸した物は自分の物だから、いつでも返してもらえる。

    期間または使う目的を定めた場合、貸主が解除できるのは、期間の満了、目的に従った使用の終了、使用に足りる期間の経過などの場面に限られます(民法597条・598条)。期間も目的も定めていないときは、いつでも解除できます(598条2項)。

  3. 契約書は、署名と押印がなければ意味がない。

    使用貸借や賃貸借の成立に、特定の書式や押印は要りません。合意の内容が分かる文書やメッセージも、合意の証拠になります。ただし、内容が曖昧だと、後から確認しにくくなります。

  4. 家賃が安ければ、賃貸借ではなく使用貸借だ。

    金額の大小だけでは決まりません。受け取るお金が使うことの対価と評価されるかを、名目や契約全体で見ます。境目は、「無料で貸す」の境目のページで詳しく扱います。

  5. 身内の間柄なら、書面はかえって失礼になる。

    書面は疑うためのものではなく、お互いの認識をそろえるための記録です。貸主が亡くなったり、物を売ったりして当事者が変わると、口約束の内容は誰にも確かめられなくなります。

答えは条文にもとづく一般的な整理です。具体的な事情への当てはめは、貸す物や合意の内容によって変わります。

最後に、このガイドが対象とする範囲をもう一度整理します。個人どうしの物・車・部屋・土地の貸し借りが対象です。事業者が個人に貸すレンタル、会社が借りる事業用の不動産の賃貸借、お金の貸し借りは対象に含めていません。これらは、契約の当事者や適用される法令が異なるため、別のガイドで扱います。

よくあるご質問

身内に物を貸すだけでも、契約書は必要ですか。

法律上、契約書がなければ成立しない契約ではありません。使用貸借も賃貸借も、貸す・借りるの合意で成立します。ただし、書面があると、貸主が物を渡す前に気が変わっても取りやめにくくなり(民法593条の2)、期間・費用・壊れたときの扱いも後から確認できます。長期にわたる貸し借りや、高額な物、車、部屋、土地を貸す場合は、書面に残す意味が大きくなります。

無料で貸したつもりなのに、実費をもらうと賃貸借になりますか。

実費の精算をもらっただけで、直ちに賃貸借になるとは限りません。使用貸借は「無償」で使わせる契約ですから、賃料にあたるお金を受け取っているかどうかが分かれ目です。実費の金額や名目、受け取る頻度、使うことの対価と見えるかどうかを、全体で判断します。境目の考え方は、「無料で貸す」の境目のページで詳しく説明しています。

友人の荷物を預かっているだけの場合は、貸し借りとは違いますか。

違います。保管を頼まれて預かっている場合は、寄託という別の契約です(民法657条)。預かった物は、預けた人の承諾なく使えません(658条1項)。無報酬で預かった場合の注意義務は、自己の財産に対するのと同一の注意とされます(659条)。借りた物の返還までの注意義務(善良な管理者の注意)とは、水準が異なります。

期間を決めずに貸したら、いつでも返してもらえますか。

使用貸借で、期間も使う目的も定めていなければ、貸主はいつでも契約を解除できます(民法598条2項)。使う目的だけを定めた場合は、目的に照らして使うのに足りる期間が過ぎれば解除できます(同条1項)。賃貸借の場合は、解約の申入れから終了までの期間が、物の種類によって異なります(617条)。詳しくは期間と返還のページで扱います。

お金の貸し借りは、このガイドの対象ですか。

対象ではありません。お金の貸し借りは、物の貸し借りとは別の契約(金銭消費貸借)で、利息や返済の定めなど、論点も異なります。このガイドは、物・車・部屋・土地の貸し借りに絞って説明しています。

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本ページは一般的な情報提供です。個別の貸し借りへの当てはめは、貸す物や場所、当事者の関係、合意の内容によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の当事者や取引を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 法務省 / 国土交通省 / 裁判所

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