土地を個人に貸す・借りるときの契約書の考え方

空いている土地を知人に使わせるとき、建物を建てるのか、車を止めるだけなのか、畑にするのかで、適用される法律も、返してもらえる時期の見通しも変わります。まず確かめる二つの問いから整理します。

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賃料を取って建物を建てさせると借地権になり、期間は最低でも30年。賃料を取らない使用貸借なら、借地借家法の借地権の定義には当たりません。同じ土地でも、お金の有無で結果が分かれます。

このページの要点

  • 最初の問いは「借主が建物を所有するか」。借地権は建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権で、使用貸借は定義に挙げられていない(借地借家法2条1号)。
  • 建物所有目的で賃料を取ると、存続期間は30年以上、更新は貸主の正当の事由がなければ拒めない(同法3条・5条・6条)。駐車・菜園・置き場は民法の賃貸借で、土地は期間の定めがなければ1年で終わる(民法617条1項1号)。
  • 二つ目の問いは「農地か」。使用貸借でも農業委員会の許可が要り(農地法3条1項)、農地の賃貸借の解約には知事の許可が要る(同法18条1項)。
  • 書面には、地番と図面による特定、使う範囲、設置物の撤去の範囲、事故のときの責任を入れる。附属物の収去は民法599条、土地の工作物の事故は717条。

結論:土地の貸し借りは「建物を建てるか」「農地か」の二つの問いから始める

土地を貸す約束は、物や車を貸す約束よりも、法律の枠組みが大きく変わる場面です。同じ「空いている土地を知人に使わせる」でも、そこに建物を建てさせるのか、車を止めるだけなのか、畑にするのかで、借地借家法という特別の法律が働くかどうかが分かれ、貸主が土地を返してもらえる時期の見通しもまったく違ってきます。さらに、その土地が農地であれば、当事者の合意だけでは貸し借りが成り立たず、農業委員会の許可が関わります。

このページは、家族・親族・友人・知人どうしの小規模な土地の貸し借りに絞り、民法・借地借家法・農地法の条文にもとづいて一般的に整理したものです。特定の土地や特定の契約への当てはめではありません。事業者が事業のために土地を借りる場合や、金銭の貸し借りは、別のガイドで扱います。無償か有償かの境目は「無料で貸す」の境目で、期間と返還の詳しい条文は貸す期間と「返して」のときで扱いますので、ここでは土地に特有の論点に集中します。

結論を先に並べます。

  • 最初の問いは「借主がその土地に建物を所有するか」。建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権が「借地権」で、借地借家法の対象になる(借地借家法2条1号)。駐車、家庭菜園、置き場は、この定義に当たらない。
  • 無償の使用貸借は、借地借家法の「借地権」の定義(地上権または賃借権)に挙げられていない。建物を建てさせる土地でも、賃料を取らない使用貸借なら、借地借家法の長期の存続期間や更新の定めは、条文の上では出てこない。
  • 家賃(地代)を取って建物を建てさせると借地権になり、存続期間は30年以上、更新後も長く続く。貸主から「期限が来たから返して」とは言いにくくなる(借地借家法3条〜6条)。
  • 二つ目の問いは「農地か」。農地を貸す・借りるには、使用貸借でも農業委員会の許可が要る(農地法3条1項)。農地を駐車場などに変えるときは、さらに別の許可が関わる(同法5条)。
  • 書面には、土地の特定(地番・面積・図面)、使う範囲、使い道、期間、設置物の撤去と元の状態に戻す範囲、事故のときの責任を入れる。口約束では、境界と撤去の範囲が最も食い違いやすい。
  • 借主が土地に置いた物・植えた物による事故は、占有者や所有者が責任を負うことがある(民法717条)。貸す前に、誰が管理するかを決めておく。

土地を貸す(借りる)前に、手元に置くもの

  • 登記事項証明書(所在・地番・地目・地積・所有者)と、現地の位置が分かる図面または写真
  • 貸す部分が土地の一部なら、その範囲を示す図面(寸法、目印、境界の杭の位置)
  • 借主が何をする予定か(建物、車の駐車、畑、資材や機材の置き場、テントや小屋)
  • 農地の疑いがあるかどうか(現地が畑や田として使われてきたか。地目だけでなく使われ方を確認する)
  • 水道・電気・通路・排水など、土地の使い方に関わる設備や隣地との関係

借地借家法の「借地権」は、建物の所有を目的とする地上権・賃借権だけ

借地借家法は、土地を借りる人を守る特別の法律ですが、すべての土地の貸し借りに及ぶわけではありません。この法律で「借地権」とは、建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権をいいます(借地借家法2条1号)。条文の定義に挙げられているのは、地上権と賃借権の二つだけです。使用貸借は挙げられていません。ここから、貸す土地の使い道と、料金の有無によって、結論が次のように分かれます。

土地を貸すときの型の分かれ道

借主は、その土地に建物を所有するか。賃料は取るか。

  • 建物を所有する・賃料を取る
    借地権(借地借家法の対象)存続期間は原則30年以上(同法3条)。更新があり、貸主が更新を拒むには正当の事由が要る(同法5条・6条)。借主が建物を登記していれば、土地の新しい所有者にも対抗できる(同法10条)。
  • 建物を所有する・賃料を取らない
    使用貸借(民法593条)借地権の定義に当たらず、借地借家法の長期の存続期間や更新の定めは条文の上では適用されない。終わり方は民法597条・598条で、期間や目的をどう書くかで決まる。
  • 建物は建てない(駐車・菜園・置き場)・賃料を取る
    民法の賃貸借期間の上限は50年(民法604条)。期間を定めなければ、土地の賃貸借は解約の申入れから1年で終わる(同法617条1項1号)。借地借家法の借地権の保護は及ばない。
  • 建物は建てない・賃料を取らない
    使用貸借貸主の解除は、期間・目的の定め方で変わる(民法597条〜598条)。借主が亡くなると終了する(同法597条3項)。
  • 臨時設備の設置など一時使用が明らかな場合
    借地借家法の一部が適用除外建物所有目的でも、臨時設備の設置その他一時使用のために設定したことが明らかなときは、存続期間や更新の定めなどが適用されない(同法25条)。

「明らか」かどうかは、土地の使い方、期間の長さ、建物の構造など、全体の事情から個別に判断されます。契約書に「一時使用」と書くだけでは決まりません。

表の上から二番目と三番目の違いは、実際の場面でしばしば見落とされます。親族に「家を建てていいよ」と土地を貸すとき、賃料を取らなければ使用貸借、毎月の地代を取れば借地権になります。地代が少額でも、使用の対価と評価されれば賃貸借になり得るため、境目の見方は無償の境目の考え方が土地にもそのまま当てはまります。

条文借地借家法

  • 2条1号借地権=建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権
  • 3条借地権の存続期間は30年。契約でこれより長い期間を定めたときはその期間
  • 5条期間が満了する場合に借地権者が更新を請求したとき、建物がある場合に限り、従前と同一の条件で更新したものとみなす。貸主が遅滞なく異議を述べたときを除く
  • 6条貸主の異議は、土地の使用を必要とする事情のほか、従前の経過や土地の利用状況などを考慮して正当の事由があると認められる場合でなければ述べられない
  • 10条借地権は、借地権者が登記された建物を土地の上に所有していれば、土地そのものの登記がなくても第三者に対抗できる
  • 25条臨時設備の設置その他一時使用のために借地権を設定したことが明らかな場合は、存続期間や更新などの規定が適用されない

条文は要約です。実際の適用は、土地の使い方と契約の内容によって個別に判断されます。

貸す側にとって大きいのは、借地権になると「貸したら長く戻ってこない」という点です。期間は最低でも30年で、期間が満了しても、借主が更新を求め、建物が残っていれば、貸主は正当の事由がなければ拒めません。逆に、借りる側にとっては、建物を建てる以上、この保護を受けられるかどうかは大きな意味を持ちます。無償の使用貸借で建物を建てる場合は、貸主の事情で土地を返すよう求められるおそれがあることを理解したうえで、期間と終了の条件を書面に明確に書いておく必要があります。

家庭菜園・駐車スペース・置き場・建築用地:使い道ごとに起きがちなこと

土地の使い道は、大きく四つに分けられます。使い道によって、確認する法令も、書面に残す項目も変わります。

使い道ごとの、起きがちなことと書面に残す項目

家庭菜園

起きがちなこと農地かどうかを確かめないまま畑として貸し、後から農業委員会の許可が必要だったと分かる。収穫物や肥料、農薬の使い方、水やり、除草の分担が決まっていない。

書面に残す項目土地の特定、畑として使う範囲、栽培してよい物、農薬・肥料・堆肥・水の扱い、収穫物の帰属、作付けの終了と引き渡しの時期、原状回復

駐車スペース

起きがちなこと土地を貸すのか、車を預かるのかが曖昧なまま、車上の被害や接触事故の責任が争いになる。台数、車種、出入りの時間が決まっていない。

書面に残す項目使う区画の位置と広さ、台数と車の特定、出入りの方法、第三者の車を入れない約束、事故や盗難のときの責任の範囲、舗装やラインの扱い

置き場(資材・機材・コンテナ)

起きがちなこと置いた物が増えて境界を越える、土が汚れる、油や廃材が残る。置いた物が盗まれたり、倒れて隣地に被害を出したりする。

書面に残す項目置いてよい物の種類と量、高さ、危険物や廃棄物の禁止、保管の責任、片付けの期限、汚れたときの回復

建築用地(建物を建てる)

起きがちなこと賃料の有無で型が変わることを知らずに貸し、期間の終わりや建物の扱いが決まっていない。建物の名義や増改築、建物を売るときの承諾が決まっていない。

書面に残す項目賃料の有無、期間と更新、建築できる建物の種類、建物の名義、増改築と建物の売却・担保の承諾、終了時の建物の扱い(撤去か買取か)

表の項目はあくまで一般的な例です。個別の土地の状況に合わせて項目を足します。

「建物」の意味に注意。借地借家法の借地権は、建物の所有が目的であることが前提です。ここでいう建物は、屋根と壁を備えて土地に定着し、居住や物置などの用途に使える構造のものを指すと一般に説明されます。ただし、プレハブ、簡易な小屋、ガレージ、コンテナなどが建物に当たるかどうかは、構造や設置の仕方によって個別に判断されます。簡単に動かせる設備だから建物ではない、と契約書に書くだけでは決まりません。

駐車スペースは「場所を貸す」のか「車を預かる」のか。貸主が車の管理まで引き受ける形になると、貸す契約ではなく預かる契約(寄託)に近づきます。寄託では、預かった側が保管に注意を払う義務を負います。この線引きは預かる・借りる・貸すの違いで整理していますので、土地の契約書には「場所を使わせるのみで、車の保管は引き受けない」のか、「保管も引き受ける」のかを、はっきり書いておきます。

置き場や菜園で、境界を越えたとき。使う範囲を図面や杭で特定していないと、少しずつ広がり、隣地との間で問題になります。借主は、貸主から借りた範囲を超えて使えば、借りた範囲の用法に反するだけでなく、隣の土地の所有者に対して別の問題を生じさせます。貸す前に、範囲を図と現地の目印の両方で決めておくのが、実務では基本とされています。

農地を貸す・借りるときは、まず農業委員会の許可

農地法は、農地の権利の移動を制限しています。農地について地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利を設定したり移転したりする場合は、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可を受けなければならないと定められています(農地法3条1項)。使用貸借による権利もここに含まれる点が重要です。「お金を取らない親切な貸し借りだから許可はいらない」とはなりません。

条文農地法

  • 2条1項「農地」とは、耕作の目的に供される土地をいう
  • 3条1項農地について使用貸借による権利や賃借権などを設定・移転するには、農業委員会の許可を受けなければならない。例外に当たる場合を除く
  • 5条1項農地を農地以外のものにするため、これらの権利を設定・移転する場合は、都道府県知事等の許可を受けなければならない。例外に当たる場合を除く
  • 18条1項農地の賃貸借の解除、解約の申入れ、合意による解約、更新しない旨の通知には、原則として都道府県知事の許可が要る

条文は要約です。許可の対象か、例外に当たるかは、農業委員会などに確認する事項です。

農地の貸し借りについて、書面を作る前に押さえておきたい点が三つあります。

  • 農地かどうかの確認。条文は農地を「耕作の目的に供される土地」と定義しています。登記簿の地目が畑・田でなくても、現にどう使われているかが問題になり得ますので、地目だけで判断せず、農業委員会の窓口で確認する事項です。
  • 許可なしの貸し借りの扱い。許可が必要なのに許可を受けずに貸し借りの約束をしても、農地法上の効力が問題になります。書面があっても、許可の問題は解消しません。許可を受けられることを前提に契約が成立する書き方(許可を条件とする)にするかどうかも、検討事項です。
  • 賃貸借と使用貸借で、終わらせ方が違う。農地の賃貸借は、貸主から解約するにも知事の許可が必要とされ、一度貸すと戻しにくい仕組みです(農地法18条1項)。この条文は「賃貸借」について定めています。使用貸借の終わり方は民法の定めが中心になりますが、どちらで書くかは農地法上の扱いを確認してから決めます。

農地を駐車場や資材置場に変えて使わせたい場合は、農地法5条の許可の問題になります。土地の使い道を変えたあとに書面を直せば済む、という話ではありません。農地の許可の申請そのものは行政手続ですので、このガイドでは手続の中身には立ち入らず、書面を作る前に確認すべき入口として整理するにとどめます。

土地の貸し借りの書面に入れる項目:土地の特定、範囲、使い道、終わり方

土地の貸し借りの書面で、ほかの対象物より重くなるのは「特定」と「範囲」です。土地は動かせず、見た目では範囲が分かりません。登記簿の表示と、実際に使う範囲がずれていれば、争いの原因になります。

書き方の例(一般的な例) 土地の貸し借りの書き方

土地の特定

よくある書き方「甲の所有する土地を貸す」とだけ書く
整えた書き方所在、地番、地目、地積を登記事項証明書のとおり書き、貸す部分が一部のときは図面を添付して範囲を特定する

理由同じ地番の中でも、どこを使うのかが争いになりやすい。登記の表示と現地を、別々に特定する

使い道

よくある書き方「適切に使用する」
整えた書き方「駐車場として普通乗用車○台を止める」「家庭菜園として野菜を育てる」のように、使い道と上限を書く

理由使い道が広いと、後から資材置場や作業場に変わっても、契約違反と言いにくい(民法594条1項の用法の基準になる)

第三者の利用

よくある書き方書かない
整えた書き方貸主の承諾なく、第三者に使わせない。同居の家族以外に使わせるときは事前に承諾を得る

理由無断の転貸・又貸しは、貸主が契約を解除できる事由になる(民法594条2項・3項、612条)

終了時の扱い

よくある書き方「原状回復して返還する」
整えた書き方設置した物、植栽、舗装、掘削、盛土のそれぞれについて、撤去する物と残す物を書く

理由「原状」の意味が当事者で違う。土地は特に、植えた木や敷いた砂利の扱いで食い違いやすい

土地の貸し借りの書面に入れる項目

  • 土地の表示(所在・地番・地目・地積)と、貸す部分の図面
  • 使い道、使ってよい範囲、置いてよい物や設置してよい物の種類
  • 期間、または使う目的。更新するかどうか、更新の手順
  • 賃料の有無と、実費があるときの名目(費用の名目は無償の境目の整理に合わせる)
  • 通路、水道、電気、排水、ごみ、除草など、日常の管理を誰がするか
  • 第三者の立入り、又貸し、使わせる人の範囲
  • 事故があったときの連絡先と責任の分担
  • 終了時の撤去と元に戻す範囲、返す日と確認の方法
  • 土地を売るとき、相続があったときの扱い(売却と所有権、死亡・共有を参照)

書面の形式そのもの(当事者の書き方、共有名義の土地の貸主、署名と控え)は、使用貸借契約書の書き方で共通の骨組みとして扱っています。土地の契約書では、その骨組みに、ここで挙げた特定と範囲の項目を足す形になります。

設置した物・植えた物・掘った穴:撤去と元に戻す範囲

土地の貸し借りが終わるとき、最も揉めるのは「借主が置いた物」の扱いです。民法は、使用貸借の借主に対して、借用物を受け取った後にこれに附属させた物がある場合、使用貸借が終了したときにその附属させた物を収去する義務を負わせています。ただし、借用物から分離できない物や、分離するのに過分の費用を要する物は除かれます(民法599条1項)。借主は、附属させた物を収去することもできます(同条2項)。また、借用物を受け取った後に生じた損傷は、借主の責めに帰することができない事由によるものを除き、原状に復する義務を負います(同条3項)。

賃貸借でも、この考え方が準用されています(民法622条)。賃貸借では、これに加えて、通常の使用及び収益によって生じた損耗と経年変化は、原状回復の対象から除かれると明記されています(民法621条)。使用貸借の599条3項には、同じ括弧書きがありません。そのため、通常の使い方によるすり減りまで直す必要があるのかは、条文だけでは割り切れず、書面で決めておくほうが争いになりにくくなります。

使用貸借と賃貸借で、土地の終了時に変わること

使用貸借(無償)賃貸借(賃料あり)
期間の上限民法に上限の規定はない。期間または目的で終わりを決める(597条)50年が上限(604条)
期間を決めない場合の終わり期間も目的も定めなければ貸主はいつでも解除できる(598条2項)土地は解約の申入れから1年で終わる(617条1項1号)
附属させた物終了時に収去する義務。分離できない物などは除く(599条1項)使用貸借の規定を準用(622条)
損傷の原状回復借主の責めに帰さない損傷を除き、原状に復する義務(599条3項)通常の使用による損耗と経年変化を除く(621条)
借主が出した費用通常の必要費は借主負担。その他の費用の扱いは595条2項必要費は直ちに償還を請求できる。有益費は終了時(608条)
第三者への対抗登記による対抗の規定はない登記により第三者に対抗できる(605条)。建物所有目的なら借地借家法10条

条文の整理であり、特定の土地の結論ではありません。表の左右で、書面に書く内容が変わります。

土地の場合、撤去の範囲を書面で決める例として、次のような区別があります。

  1. 借主が持ち込んだ動産(資材、機材、コンテナ、遊具、プランター):借主が全部撤去する。
  2. 土地に固定した物(基礎、フェンス、舗装、ライン、物置):撤去するか、貸主が承諾すれば残すかを決める。残す場合は、後から代金や費用を請求しない約束にする。
  3. 植えた物(果樹、庭木、野菜、花):収穫の時期を考えて期限を決める。果樹や庭木は残すか抜くかを決める。
  4. 土地の形を変えた部分(盛土、掘削、井戸、排水溝):元の高さと形に戻す範囲と、埋め戻しに使う土の質も決める。
  5. 汚れ・廃材・油:借主の責任で処分し、土壌に影響があるときの連絡の約束を置く。

費用の償還や損害の請求が、返還を受けた時から1年以内という期限に服する点は、費用と、壊れた・汚れたときで詳しく扱います。土地の場合も、返却の日に現地で状態を確認して記録しておくことが、この期限との関係で重要になります。

土地の工作物・樹木による事故は、誰の責任になるか

土地を貸したあとに、その上の塀が倒れた、置いた資材が崩れた、庭木の枝が落ちて通行人にけがをさせた、という事故が起きることがあります。民法717条は、土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者が被害者に対して損害賠償責任を負うと定めています。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者が損害を賠償しなければなりません(717条1項)。竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合にも準用されます(同条2項)。

条文民法

  • 717条1項土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があって他人に損害を生じたときは、占有者が賠償責任を負う。占有者が必要な注意をしたときは所有者が負う
  • 717条2項竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合に準用
  • 717条3項損害の原因について他に責任を負う者があるときは、占有者または所有者は、その者に求償できる

貸した土地では、借主が占有者、貸主が所有者という関係になるのが一般的な整理です。

この条文から、土地を貸す側が確認しておくことが見えてきます。貸したあとも、所有者としての責任が残る場面があること。借主が占有者として第一次的に責任を負うが、必要な注意をしていれば所有者に責任が移ること。そして、損害の原因が別の人にあれば求償ができることです。実際の事故では、どのような瑕疵があったのか、誰が管理していたのかが争点になるため、貸す前に「誰が点検するか」「危険を見つけたら誰に伝えるか」を決めておくと、判断材料になります。

確認の問いと理由事故に備えて書面で決めておくこと

  1. 既存の塀・擁壁・樹木・井戸・側溝は、誰が点検し、誰が直すか。

    貸す前から土地にあった物と、借主が持ち込んだ物では、責任の出発点が違う。貸す前の状態を記録しておくと切り分けやすい。

  2. 借主が設置した物は、借主が点検し、危険があれば貸主に知らせる義務を負うか。

    占有者に当たる借主が必要な注意をしたかどうかが、717条の分かれ目になる。注意の内容を決めておく。

  3. 近隣や通行人に被害が出たとき、先に誰が連絡し、費用を立て替えるか。

    連絡が遅れると事態が広がる。最初の対応の担当を決めておけば混乱が減る。

  4. 保険に加入しているか。誰の保険を使うか。

    土地の賠償責任は、保険の対象かどうかで負担が大きく変わる。加入の有無、補償の範囲を証券で確認する。

起きがちなこと:口約束の土地利用が、あとで「借地権だった」「農地だった」になる

土地の貸し借りの食い違いは、多くが「最初の二つの問い」を確かめなかったことから生まれます。親切で貸した土地に、数年後に借主が建物を建てて地代も払っていた、ということになれば、貸主が思っていたより重い関係になっているかもしれません。畑として貸していたら、農地の許可が問題になることもあります。次の表は、起きがちなことのまとめです。

土地の貸し借りで起きがちなこと

  • 建物を建てさせた土地で、賃料の有無があいまいなまま、借地権か使用貸借か当事者で認識が違う
  • 農地を、許可を受けずに貸し借りしている。後から農業委員会の確認で問題が分かる
  • 使う範囲を図面で決めておらず、借主が少しずつ広げて使う
  • 設置物の撤去の範囲が決まっておらず、基礎や舗装、植えた木の扱いで揉める
  • 駐車スペースで、車の被害を貸主が負うのかが決まっていない
  • 借主が亡くなり、残された家族が使い続ける。土地の上に物や建物が残る
  • 貸主が土地を売り、新しい所有者から返還を求められる
  • 借主が第三者に又貸しし、貸主が知らないまま使われている

どれも、事前に書面で整理しておけば小さくできる問題です。借主が亡くなったとき、貸主が亡くなったとき、土地が売られたときの扱いは、死亡・共有と売却と所有権で別に整理しています。個人間の貸し借り全体の地図は個人間の貸し借りの契約書の全体像にまとめています。

よくあるご質問

親戚の土地に家を建てさせてもらう場合、借地借家法は使えますか。

借地借家法の「借地権」は、建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権です(同法2条1号)。賃料を払う賃貸借なら借地権になり得ますが、賃料を取らない使用貸借は、条文の定義に挙げられていません。賃料と呼べるお金の支払いがあるかは、名目ではなく実態で見られるため、毎月払うお金の趣旨と額を書面に明確にしておくことが、型を決める出発点になります。

家庭菜園のために、知り合いの畑を借りたいのですが、契約書だけで足りますか。

畑が農地に当たる場合、使用貸借でも賃貸借でも、農業委員会の許可が必要とされています(農地法3条1項)。契約書があるだけでは、許可の問題は解決しません。農地かどうかは、登記簿の地目だけでなく土地の現況から判断される部分があるため、契約書を作る前に、農業委員会の窓口で確認する事項です。

駐車場として土地を貸した場合、車上荒らしの責任は貸主にありますか。

貸主が場所を使わせるだけなのか、車の保管も引き受けているのかで考え方が変わります。場所を使わせるだけなら賃貸借や使用貸借で、保管を引き受けていれば預かる契約(寄託)に近づきます(民法657条)。書面に「車の保管・管理は引き受けない」と書く例が見られますが、実際の取り決めと書面が食い違うと、書面の記載だけで結論が決まるわけではありません。

期間を決めずに貸した土地を返してもらいたいとき、いつまでに言えばよいですか。

賃料を取る賃貸借で、建物所有目的でない土地は、期間を定めなければ、各当事者はいつでも解約の申入れができ、申入れの日から1年で終わります(民法617条1項1号)。収穫の季節がある土地は、その季節の後、次の耕作に着手する前に申し入れる必要があります(同条2項)。賃料を取らない使用貸借なら、期間も目的も定めていないとき貸主はいつでも解除できます(民法598条2項)。建物所有目的の借地権では、これらとは別に借地借家法の定めが働きます。

借主が土地に置いた物を残したまま出ていったときは、どうなりますか。

使用貸借では、借主は附属させた物を収去する義務を負います(民法599条1項)。賃貸借でも準用されます(同法622条)。残された物の処分の方法や、保管の期間、費用の負担は、条文だけでは細部まで決まらないため、書面に「退去後に残った物は、一定の期間のうちに引き取らなければ処分できる」といった定めを置いておくことが多く見られます。

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本ページは一般的な情報提供です。個別の貸し借りへの当てはめは、貸す物や場所、当事者の関係、合意の内容によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の当事者や取引を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 法務省 / 国土交通省 / 裁判所

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